●ヨハ十●







「…やっぱりこっちの方が良かったんじゃないか」
「いや、オレとしては、こっちを狙ったんだけど」
「ああ…でも、それだったらこれをこうして」
「なるほど。だったら、こっちの方が…」
 いつものように十代の部屋で、デュエル後の反省会。カードを並べていた途中の事。
 不意に十代にキスしたくなった。
 思い立ったら即行動が信条ではあるけれど、これはいくらなんでもまずいだろう。そう思ったのは全てが終わった後で。
「どうしたんだ、いきなり」
 十代の問いかけで我に返った。彼は驚いたように目を丸くしているが、むしろ驚いたのはこちらの方だ。
「ええと…なんか急にやりたくなって。悪い、迷惑だったろ」
 謝るつもりで両手を合わせると、十代は慌てて手と首を一緒にぶんぶんと振った。
「いや、ちょっとびっくりしただけで」
「そっか」
 ほっとして思わず胸をなでおろすと、十代がぷっと吹き出した。
「なんだよ、大げさだな」
「大げさって、オレとしてはお前に嫌われるかどうかの瀬戸際だったんだよ」
「そんな事ないって」
 向けられた笑顔がひどく無防備で、引き寄せられるように唇を合わせた。
 そのまま出来る限りそっと押し倒して、さらに深く口付ける。抵抗がないのをいい事に散々口内を味わって解放すると、十代は苦しかったのか、目の端に涙を浮かべてこちらを見た。
「これでも?」
 言ってしまって、すぐに後悔した。もう冗談では済ませられない。
 でも、過ぎてしまった事だ。この際だと覚悟を決めて、十代の答えを待つ。
 こちらの覚悟を知ってか知らずか、十代はさっきと変わらず平然と言った。
「別に」
「…本当か?」
「ああ」
 まっすぐな視線からは嘘は感じられない。混乱しつつも、許されたのが嬉しくて、行為をエスカレートさせる。
「これは?」
「平気だけど」
 ズボンのベルトに手をかけて、はずしてみる。
「これでも?」
「大丈夫だって」
 さらにチャックを下ろして、ズボンを下着ごと下ろす。
「ここまできたら、さすがにダメだろ」
「いいから。…ああ、もう面倒だな!」
 股間のモノに手をかけた所で十代がついに怒ったが、それは行為に対してではなく。
「いちいち聞かずに、さっさと全部やれよ。お前らしくないぜ」
「全部…ってお前、オレが何やろうとしてるか分かってるのか」
「なんとなく」
「なら、分かるだろ。オレはお前を気遣って―」
 言葉の続きは十代の唇に遮られた。
「気づかいって言うなら、オレの気持ちも察しやがれ」
 ばーか、と。
 どこか怒ったような台詞の意味を理解して、ぎゅっと抱きしめる。好きだ、と告げたら「遅いんだ」と怒られたので、これ以上失言しないように、口は話す以外の用途で使う事にした。









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有り難うございます!!